飯屋のクソ野郎ども

とある飯屋のカウンターに座ると、隣にスーツのおっさんが3人座っていた。

人の話を盗み聞きする趣味はないが、この近さではどうしても会話が聞こえてしまう。そこに懐かしい単語が含まれていれば尚更だ。

 

話の内容からして、どう考えても、彼らは僕の前職の人間だった。

 

…思わず顔を見てしまう。幸いにも知らない顔だ。よかった。

 

それにしても、めちゃくちゃ悪口言ってる。休みがないだの給料が低いだの、あの低能上司はいつ辞めるのか、だの。

しまいにはお客さんの悪口まで言い出した。名前を出して、誰々は×××だ、だの。

 

少し背筋が凍る。

 

これ、隣にいたのが僕だからよかったけど(よくないけど)、僕がその人の知り合いだったらどうするつもりなの…?

 

そして、

 

ああ、僕はこの会社を辞めてよかったなぁと思った。

 

正確には、きっと辞めていなければ、僕もこうなっていたのだろう、と思った。

 

会社にいた頃の、心が麻痺していく感覚。自分が自分でなくなってしまう窮屈な感覚。口を開けば愚痴をこぼしていた時期は、たしかに僕にもあったのだ。

 

そして思い返せば、自分も同じことをやっていた。さすがにオープンスペースでは控えていたけれど、個室居酒屋や宅飲みの席で、彼らのように愚痴っていた記憶。確実にそれは僕のものだ。

 

それって、

 

 

ダセえよなぁ。

 

 

え?今さらそんなこと気付いたの?

 

 

そう、今さら気が付いた。ダセえよあれは…。

洗脳が完成する前に、すっぱり辞めておいてよかった。

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