そして結局、バスケ部は、辞めなかった。
ただ、辞める勇気がなかっただけだ。当時高校生だったボクは、レールから外れることに、大いなる恐怖心を抱いていた。レールから外れたら死ぬと思っていた。
部員からは、相当疎まれていたと思う。よくぶん殴られなかったと思う。ヘラヘラと最後まで残り、あまつさえ試合に出たりしていたのだから。
最悪だ。スポーツ漫画にひとりはいる、いけ好かない奴だ。最後にはこっぴどく負けるのだ。
実際、最後の大会は、あっけなくという言葉よりもさらにあっけなく、終わった。
それでもなぜか、バスケは好きだった。
大学に入ると、体育の授業でバスケがあった。友人とふたりでガイダンスに行ったのだが、彼がどうしても卓球がやりたいと言うので、別々になることにした。
ひとりで指定された体育館に行って愕然とした。既に輪ができている。いや違う、これは、最初から5~6人の友達グループで参加しているのだ。なんだこれ、聞いてない…。嫌な汗が流れ、果たしてその予感は的中した。
バスケは、つまらなかった。
シュートを決めてもパスを出しても、誰とも喜びを分かち合えない。誰も「ヘイパス!」とボクに言わない。目も合わない。ボクがボールを持つと、場がしらけるのを感じた。大げさじゃない。本当だ。こんなはずじゃなかった。バスケはもっと楽しいはずだった。こんなことなら、あいつと卓球やればよかった…。
そしてふと思った。
ここにバスケ部の連中がいたら。
きっとバスケは楽しくなる。点を決めたら皆で喜ぶのだ。パスするときは目を見るのだ。それがバスケだ。それがボクとできるのは、あいつらだったのだ。
生徒会を言い訳にサボっていたあの時間を、冷凍保存して持ってきたいと思った。今ならもっとうまくやれる。ふたつの世界を両立できる。バスケ部の連中と笑って引退する未来も、きっとあったはずだ。あったはずなんだ。
でも、過去はいくら嘆いても過去のまま。どれだけ悔やんでも帰ってこない。
ボクが選んだのは、いま、ここ。どんなに最悪でも、せめてバスケは楽しまなくちゃ。あの時の分まで、この試合くらいは集中しようと、誰かの取りこぼしたボールを拾い上げる。シュートを打つ。外れる。