エッセイ

夏休みとビアガーデン

ビアガーデンに初めて行ったのは、2年前の夏の事だ。

 

当時僕は仙台に住んでいて、大学生という身分を存分に謳歌していた。
大学は夏休みの真っ只中で、それは当時お付き合いをしていた女性も同じだった。

もてあましていた。だから、

「ビアガーデンに行ってみたい。」

とごく自然に思ってしまった。

そして、夏に酔った男女が選んだのは、身分不相応な高級デパートの屋上だった。
後にも先にも、そのデパートには入っていない。

無理して払った数千円の呪縛から解き放たれるべく、僕たちはがむしゃらに食べ、飲んだ。

なにを話していたのか、まったく覚えていない。
ただ、一杯目のビールを抱えてこちらに駆け寄ってくる笑顔の女性を、ぼんやりと覚えている。

 

あれ以降、ビアガーデンには行っていない。
毎年夏が来るたびに、駅前に貼られるポスター。
「今年は行ってみっか。」なんて思いながら、誰と行けばいいのか分からずにいる。

-エッセイ

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