エッセイ

暖房

静岡県の、暖かい片田舎で生まれた。

大学進学を機に仙台に引っ越した。冬の寒さが何よりも辛かった。6畳のワンルームに住んでおり、そこにエアコンは、なかった。

大学4年生の初夏、大家による改装工事が行われた。改装工事と言っては大袈裟だけれど、住人にとってはそれ以上の意味を持つ取り組みだった。つまり、エアコンが設置されたのだ。

住人は歓喜し、夏の喚起をやめ、人工の寒気を部屋中に取り込んだ。いままでの生活は何だったのかと思うほど、快適な夏だった。

やがて冬が来て、暖房をつけようとリモコンを手にしたとき、ボクは絶句した。大家の設置したエアコンは、クーラーの機能しかついておらず、暖房の機能は、なかった。

しかも窓にはめ込むタイプのエアコンだったため、スキマ風が絶え間なく吹き込んでくるのであった。おかげで家でコートを着込み、マフラーをしながらギターを弾いたり、歌ったり、録音したりなどした。

…それから数年。紆余曲折の末にたどり着いた今の部屋には、頭上にエアコンがあり、暖かい風を送り出している。家の中でコートを着る必要はなくなったが、パリパリに乾く唇に、悩まされることになった。

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