仙台へ弾丸旅行してきた。
目的はライブ。「独唱」という変わった名前の友人がワンマンライブをするというから、平日のど真ん中に夜行バスで駆けつけたのだ。
我々のようなアマチュアのワンマンライブには、「前座」がいることが多い。この日の前座は新潟県から来た「空洞」という名前の男だった。
どうしてみな変わった名前で活動するのか、月岡彦穂的には甚だ疑問である。…え?本名ですよボクは。
突然だが、アコースティックギターというのは素晴らしい楽器だ。
誰でもとっつきやすいし、単音も複音も奏でられる。表現の幅も広く、激しいパンクもしっとりしたバラードもお手の物。
それひとつで完結した楽器。それがアコースティックギター(以下アコギ)だ。
独唱も空洞も、アコギの弾き語りで活動している。ついでに言うとボクも、ツイキャスでは弾き語りを披露させて頂いている。
アコギに魅せられた人間は数知れず、「弾き語り アコギ」でYouTube検索すれば、際限なくアーティストが出てくるだろう。
ただ数が多い分、そこから抜きん出るのは難しい。
例えば「スマホ」と言えば有名な某3社がまず思い浮かぶだろうが、「パン」と言ったらそれは難しい。大手企業から個人商店まで、パンをこしらえる場所はいくらでもあるからだ。
しかし、しかしだ。個人商店のパン屋は「大手に勝ちたい!」と思って営業しているのだろうか。「街で一番のパン屋になりたい!」あわよくば、「いつか全国に店舗を広げたい!」とは思っているかもしれないが、彼らの原動力…真の意味で本質的な原動力は、そこではないはずだ。
「パンが、好き。」
それだけだったはずだ。
彼らはただパン好きが高じて、パン屋を始めたのではないだろうか。
もちろん始めてから色々な想いはあっただろう。ボクはパン屋ではないから憶測でしか語れないが、資金の問題、集客の問題、体力の問題、クオリティの問題…考えることは山積みであろう。
我々のようなアマチュアミュージシャンも、パン屋と同じ悩みを抱えている。…独唱も空洞も、きっと同じように抱えているはずである。
例えば環境が変われば、今まで出来ていたことだって出来なくなるかもしれない。
独唱はこの春から東京へ、空洞は去年から新潟へ、それぞれ働きに出ている。
きっと音楽に対して、思うことはたくさんあるだろう。あっただろう。
それでもステージ上での彼らは、凛としていた。迷いも悩みも全て抱えた顔で、楽しそうにアコギを弾いて歌っていた。
そこに本質を、見た気がした。
そうだ、ボクら音楽が好きで、音楽やってたんだっけ。
そんなことに気づかされたライブだった。無理して夜行バスで駆けつけて、本当に良かった。
そしてボクは翌日、職場の休憩室で歌詞を書き、アルバイトの大学生から奇異な目で見られることになる。あはは、知ったことか!
【穴が空く / 空洞】
【8月のフェイドアウト / 独唱】
【音楽が好きだ / 月岡彦穂】