「『ひこほ』という名前は彦星にちなんでつけられたんですか?」
という質問をよく受ける。なんなら、「ちなんでつけられたんでしょう?」と、もはや規定事項であるかのように話されることもザラだ。
結論から言えば、答えは「NO」である。ボクの誕生日は7月7日ではなく2月27日だし、親戚に織姫ちゃんがいるわけでもない。彦星にちなむ理由が何一つないのだ。
というか彦星にちなまれても困る。たくさんの人の願いを叶えてあげられますように、だったら、月岡ブッダでもよかったはずだ。
では、一体何にちなんだのか?
実はちなんだどころか、彦穂、は他人の本名だ。
椋鳩十さんという有名な作家をご存知だろうか。「大造じいさんとガン」「片耳の大シカ」などで有名な、昔の作家さんである。
その椋鳩十さんの本名が、久保田彦穂だった。
ボクの両親は大学が同じで、文学部で出会い、そして結婚した。父曰く、ふたりが大好きだった作家が、椋鳩十その人だったらしい。
もしかしたら、椋鳩十の作品が出会いのきっかけだったのかな、と予想している。なんともロマンチックな話ではないか。
あいにく、ボクは小説家ではなくミュージシャンになってしまったが、今年は気がついたら小説を書いていた。
名前の呪縛とは恐ろしいもので、でもどこか誇らしくもあるのだ。