エッセイ

東京。人とぶつかりて。

東京に出てきてから、よく人にぶつかる。駅でも、交差点でも、たぶん1日に1回はぶつかっている。

ボクは「相手がぶつかってきた」と思うが、たぶん相手も同じことを考えている。人にぶつかって、良いことなんてひとつもない。空虚な怒りと、歩みを妨げられた不快感だけが残る。

ボクは歩くのが速い。まず考えたのは、それが原因なのではということだった。しかし、仙台にいた頃、同じくらいの人混みの中を歩いても、誰ともぶつかることは無かった。人とぶつかるようになったのは、東京に来てからだ。

 

ああ、楽になりたい。東京のせいにして、楽になりたい。あいつら人を避けることをしないんだ、って書いてしまいたい。でも、それも少し違う気がする。

なぜか。それはボクも、東京の一部だからだ。旅行に来てぶつかっているわけではない。こちらに住み、働き、1年が経とうとしている。

いつのまにか壊れてしまったのかもしれない。人を避けて歩くセンサーみたいなものが。満員電車ですし詰めにされたり、エスカレーターでオヤジのつむじを鼻先に感じたりしているうちに、何か大切なものが麻痺してしまった気がする。

みんなどうしているんだろう、この気持ち。東京で人とぶつかるのは仕方ないと割り切れれば楽なんだろうけど、ボクらはみんな、最初からそうだったわけじゃないでしょう?

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