物語はインターネットを基軸に進んでいく。
分岐点には、いつだってインターネットがある。ブログによる誹謗→Twitterでのリプの炎上→YouTubeでの炎上。そして最後は逆転劇としての、Twitterでのフードトラック拡散からの大盛況。
一度はシェフとして栄華を極めたカールが、ネットで叩かれどん底まで落ち、仕事も失ったときはヒヤヒヤしたが、そこからの這い上がりが凄かった。元妻の提案でマイアミを訪れ、キューバサンドイッチに感動し、フードトラックを思いつく。
特に汚いトラックを息子のパーシーと掃除しているシーンは、いつ見てもワクワクする。あ、ここからやってくれるんだな…!という期待感を煽られる。元同僚のマーティンが駆け付けるシーンなんか、思わずニヤニヤしてしまう。彼のフランクなキャラクターがなければ、「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」はもっと固く、暗い作品になっていただろう。
3人を乗せたトラックは、とても良いバランスで走っていく。カールは不器用なリーダーとして、マーティンはムードーメーカーとして、パーシーは宣伝係として。
そんな3人に共通しているのは、「今が最高に楽しい」ということ。
さらっと流されていたが、移動中に下品な歌を歌うシーンが素晴らしい。冒頭でカールはパーシーにに「汚い言葉を使うな」と注意していた。しかし真逆のことをする父親を見て、パーシーは思わず苦笑い。映画終盤のこのシーンは、もしかしたら、ようやくカールとパーシーが分かり合えた瞬間なのかもしれない。
ほとんどの人には大失敗の経験があり、ほとんどの人には大切な人がいる。カールは超有名シェフ。現実とかけ離れているようでいて、実はそうでもない。
毎日見ているTwitterやYouTubeが、映画の非現実感をほどよく薄めている。
「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」の主人公は、あなたであっても、きっと成り立つはずなのだ。