ムシューダ、という防虫剤をご存じだろうか。
↑開封後ですみません…。
スーパーの季節用品コーナーに山積みにされていたそれを、ボクは見たことがあるような気がした。
「使ったことがないのに知っている」というのは、広告がきちんと機能している証拠だ。ちょうど衣替えを予定していたボクは、試しに1個買ってみることにした。
ムシューダには大きく分けて2種類が存在する。クローゼットやタンスに引っ掛けてつるして使うタイプと、コートやスーツなどに被せて使うタイプだ。
ボクが選んだのは後者で、ちょうど翌日、クリーニングに出した冬用コートが返ってくるところだった。
パッケージを開けると、無機質なパックが3つ顔を出した。広げるとロングコートよりも少し長めに作られており、襟から裾まですっぽりと覆うことができる。
↑しかも透明で、中身がきちんと見える。
こういった商品の魅力は「被せておく『だけ』でOK」という点にある。夏の間のあれやこれやも、4月頭にこれを被せておくだけでまったく問題ありませんよ、安心と信頼の未来投資ですよ、というわけだ。
被せた時は当然何も起こらないし、半年後、それを取っ払ったときも、当然何も起こらない。ただ、4月頭と同じものが出てくるだけだ。
しかし我々は、「使わなかったら半年後に酷い思いをするかもしれない」という気持ちで、ムシューダを使う。
「不安を煽り、その解決策を提示し、尚且つ簡単で分かりやすく、手間もかからない」というわけだ。お手本のような商品である。季節用品コーナーに山積みにされるのもわかる。自分も思わず、買ってしまった一人だから。
何も起こっていないのに、「良い買い物をした」という記憶が残っている。さっきコートをクローゼットに仕舞った後も、何か大変なことを成し遂げたような気持ちになったが、なんてことはない、ムシューダを被せただけだ。
この謎の満足感まで合わせて、商品の魅力というわけか。ムシューダ、大した奴だ。まだ何もしていないけど。