エッセイ

雨の日。

雨は、嫌いじゃない。

どこへ行くにも原付バイクだった学生時代と違い、今は、どこへ行くにも電車と徒歩だ。雨の日には、原付に乗れなかったから、当時は雨が降ると最低な気分になった。

だから、雨は嫌いだった。

 

でも今は、「雨も悪くない」と思う。

 

雨の日にしか、見られない風景がある。長靴を履いた子供や、レインコートの自転車乗り。原付に乗っていた頃は、気にも留めなかった風景だ。駅前のコンビニには透明傘が500円で陳列され、駆け込んできた黒コートのオヤジが、ひったくるようにしてそれをレジへと持って行く。ぴちゃぴちゃと、水を踏みつける音がする。

鬱蒼とした空気の中、音楽を聴きながら歩くのも良い。曲が静かになれば、雨音は素敵なBGMへと変わる。そうだな、前から気になっていた喫茶店へ入り、雨宿りがてら文庫本など読むのも良い。

 

雨の日には、雨の日の良さがある。それに気がついた頃には、もう平成も終わろうとしていた。

-エッセイ

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