日高屋の迷惑老人

「おい!客が呼んでんだよ!早く来なさいよ!」

そう隣で叫んでいるのは、歳にして70過ぎほどの白髪の老爺であった。
向かいには同じく白髪の老婆が座っており、コップに継がれた水を豪快に飲んでいた。

「まったく…なんだねこの店は。」

老爺は駆けてきた店員を叱っている。店員は「申し訳ありません。」の一辺倒で、老爺の怒りはとどまるところを知らない。
老婆はその間、空のコップを握りしめて店員をじっと見つめていた。

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ボクがラーメンをすすっていると、隣の席に老夫婦がやってきた。
老爺は席に着くなりタバコを咥えると、煙をボクの方に吐き出した。
麺をすするのを止めて顔を上げると、老爺と目があった。
老爺はボクを睨みつけると「おーい。」と店員を呼んだ。

それは休日のお昼どき。店内は客でごった返していた。
注文のベルの音が絶えず鳴り、食器を運ぶ音と店員の声で店内は相当賑やかだった。

老爺はベルを使わず、「おーい。」と店員を呼んだ。
当然騒然とした店内でその声は掻き消され、店員が来ることは無かった。

これが老爺の逆鱗に触れたらしい。ここでようやく、話は冒頭に戻る。
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乱暴に「チャーハン」と言い放つと、老爺は豪快に水を飲んだ。
時間にして1分ほどの説教のあと、老爺は老婆に話しかけた。

「客が呼んでんだからとっとと来いってな。なんなんだ本当に。」
「まったくね。常識ってもんがないのよ。」

老夫婦は楽しそうに話し続ける。ボクは立ち上がり、老夫婦にこう言った。

「こんなに混んでいるんだ。すぐに来られるハズが無いでしょう。
そもそも店員を呼ぶときは『おーい』じゃなくてベルを使うんだ。
店のシステムから外れたことをしたのに、正規の対応を求めて怒るのは道理に合っていない。
さっきの店員が可哀そうだ。今すぐ謝るか、この店から立ち去れ!」

一瞬静まり返った後、店内には誰からともなく「帰れ!」コールが響く。先の店員が耐えきれなくて泣いている。
そこで店長が厳かに告げる。「店員を守るのが私の使命です。本日はお引き取りください。」

そこまで妄想して、くだらなくなってやめた。

ラーメンを食べ終えると静かに席を立ち、何事もなかったかのように生活に、戻る。

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