エッセイ

仙台の地下鉄と光

仙台の地下鉄は、地上を走る。

 

地上に出ようと出まいと、目的地に着きさえすればそれでいいのだが、それでも突然差し込んでくる光にはハッとさせられる。何かすごく、恥ずかしいことをされた気分になる。

どうして暗い場所って、あんなに落ち着くんだろう。なぜ人は、意中の人を口説くとき、明るい喫茶店ではなく薄暗いバーに入るのか。

 

思うに、人間は本能的に暗い場所が好きなのだ。

人間には「人間関係」がある。誰もが膨大な量の情報を持っており、それらが複雑に…複雑に絡み合うことで、人間社会は成り立っている。

 

みんな、疲れない?

 

一部を除いて、人間の活動時間は昼と決まっている。昼は仕事、夜はフリー、という人が多い。光のあるうちは、「まとも」を演じ、待ちに待った夜、人間は「動物」になる。23時に池袋駅に行けば分かる。…人間は「動物」になる。

暗い場所は、夜を連想させる。東京の地下鉄は、昼も夜も全く景色が変わらない。それを見ていると、願わくば夜であれ、とさえ思う。しかし仙台の地下鉄は違う。油断すると、やられる。

まったく、地下鉄に乗っている時くらい油断させてほしいものだ。…とここまで書いて、でも、やられてもいいから今度仙台に行こう、と思い立った。

-エッセイ

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