バレンタインデイ・ラプソディ

2月14日の特別感は、歳と共に希薄になっていく。今日が全国的に行われるチョコレート祭りの当日であることも、朝冷蔵庫を開けるまで忘れていた。

特別感のピークはやはり高校生だろうか。タッパーに入ったクッキーを配り歩く配達系女子は、皆さんの学校にも居たのだろうか。「友チョコ」という言葉は、いつから生まれたのだろうか。


 

というか2月14日にチョコを使って告白、なんて現実にあるのだろうか。ボクは知らない。知らないよそんな世界。…あぁ、カップルのやつはダメね。あれは約束されたチョコだから。ときめきもなんもない。ボクが言いたいのは、「想定外の女子からチョコと共に告白を貰える男」がどれだけいるのかということだ。

ボクの周りにはいなかった…と思う。実際はいても隠していたのかもしれないが、中高なんて閉じた世界で隠し事っつったって限界がある。だから本当にいなかったのだと思う。

どうなんだ、なぁどうなんだ。そんなイベントあんのかよ。漫画の中だけじゃないのか。どうなんだよ、おい。

 

 

…はっ、いかん。取り乱した。冷静になれ。ここはどこだ…ここは…自分の部屋。一人暮らしの小さな部屋で、ボクが食べているのは何だ…これは、これは…

手作りチョコレートだ!

チョコレートだ!やった!ボクはバレンタインにチョコレートを食べている。女の子から貰った、小さくて可愛いチョコレートだ!

一口大のチョコレート。口に含めば熱で溶け、舌に歯に、ねっとりとまとわりつく。甘い。そして少し、ほろ苦い。

夢の中にいる。チョコレートを食べている時、男は夢の中にいる。チョコレートには「飲み込む」という概念がないから、夢の終わりは…境界線はどこにもない。ただもったりと、ボケーッとした感覚だけが続く。

あぁ、このまま、溶けてしまいたい…。


 

灯りのついた部屋で目を覚ます。PCの脇には空っぽの缶ビール。ぼさぼさの髪をした男のおでこに、キーボードがかたどられている。

ああ、ブログを書きながら寝落ちしてたのか…。

部屋の時計は、朝の8時を差している。何かハッピーな夢を見ていたような気がするが、どんな夢なのか、ちっとも思い出せない。

喉がカラカラだ。麦茶麦茶、と立ち上がり、冷蔵庫を開けると、そこにはいつ買ったのかも分からないチョコレート。ずっとあったはずなのに、なんで今更目についたんだろう。不思議に思った男は、なんとはなしにカレンダーを見る。苦笑いから始まる朝のおはなし。

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