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教員の彼女と同棲したら、働き方が過酷すぎた話。

突然だが、ボクは学校の先生と、付き合っていたことがある。

 

…おっと誤解を生みそうな文章だ。彼女の職業が教員だった、という意味だ。同い年の女性だった。

 

今日は彼女と同棲して分かった、教員の過酷過ぎる働き方について書こうと思います。
では、どうぞ!

 

馴れ初め

彼女とは大学生の頃から2年半ほど付き合っていた。そして2人が社会人になるタイミングで、同棲を始めた。

彼女はボクより1年早く社会に出ていたため、同棲を始めたときには、先生2年目であった。

 

ボクの仕事は午後から始まる。朝の7時半に彼女を見送ってから、家事をしたり、テレビを見たり、ゆったりとした時間を過ごすことができた。自分の昼飯のついでに、2人分の夕飯の仕込みをしてから、家を出た。

働く時間、長すぎじゃない…?

彼女の「定時」は17時。ボクは22時だった。

その差、実に5時間。寄り道しても余裕でお釣りの来る時間だ。

 

しかし彼女はほぼ毎日、ボクと同じ時間に帰ってきた。それどころか、家に帰っても真っ暗な夜が、何度もあった。

 

彼女は帰るとただいまと呟き、ドサリと荷物を置き、座椅子に腰を下ろすのが日課だった。決まって、ふぅ、と溜息をつき、疲れきった顔でペタンと座りこんだ。

 

 

夕飯を食べるとすぐに、翌日の授業準備に取り掛かった。毎日1~2時間はやっていた。

途中で眠気がくると、彼女は仮眠をとった。10分後に起こして、とボクに頼み、望み通り10分後に起こすと機嫌が悪くなった。「今日はもう寝る。明日早起きしてやる。」と言い、シャワーは浴びずに化粧だけ落として、深夜1時半、ベッドに潜り込んだ。アラームは3時間半後にセットしていた。

 

そんな生活が続いた。「毎日」続いた。

仕事を辞める気はない?

同棲を始めてから、そんな生活がずっと続いた。2人で飲みに行った時、ボクは思い切って彼女にこう言った。

 

 

「こんな生活おかしいよ。仕事を変える気はない?」

 

 

今思えば、無神経な発言だったと思う。彼女はこう返してきた。

 

 

「辞める気はない。私が辞めたら、他の人に迷惑がかかってしまう。」

「2年目は忙しいの。あなたも来年になれば分かる。今は辞められない。」

 

 

…ぐうの音も出なかった。苦しんでいるのは彼女だけではない。きっと周りの職員もみな、過酷な生活の中でなんとかやっているのだ。2年目になった彼女は責任感に満ちていて、もう立派な社会人の顔をしていた。

 

でも、とボクは思う。

 

 

 

でも、君が倒れたら、ボクは悲しいよ。

 

 

 

そして非情にも、こう思ってしまった。君が倒れるくらいなら、と。他の人にどれだけ迷惑をかけてもいい。君だけは逃げて。君だけは助かってほしい。

でもそれはエゴだ。それもとびきり醜いやつ。相手の為と見せかけた、非常に利己的で、子供っぽい考え方だ。…大人になれないボクに、彼女は酒を舐めながら職場の話をしてくれた。

やりがい搾取

 

クラスにこんな子がいてね。先週はこんなことがあってね、すっごく面白かったの。来週はこんなイベントがあって、今は準備でバッタバタで大変なの…。

そしてどんな愚痴でも、最後は決まってこう言うのだ。「でも子供は可愛いよ。」

 

 

一方で、日曜の夜はいつも憂鬱そうだった。大好きなお酒も少量に控え、早めに風呂に入り、明日から仕事かぁ、嫌だなぁ、と力なく笑った。

 

「ねぇもう一回、金曜の夜からやり直せたらいいのにね。」

 

…そんなことは20代の新米社会人なら誰でも思うことで、だから彼女だけが特別という訳ではない。しかし、同じ家で毎日生活を見ているボクに、その言葉は深く、深く突き刺さった。

口ではそんな冗談を言っていても、彼女は自分の職業に誇りを持っていた。子供の事も間違いなく好きだった。話を聞く限り職場での信頼も厚く、人間関係も良好なようだった。

彼女は変わってしまった

学生時代、彼女はよく笑う人だった。明るくハキハキと喋るし、友達も多かった。放課後デイサービスの施設でボランティアをしていて、その様子をありありと楽しそうに話してくれた。

しかしその笑顔は、社会人になってからどんどん減っていた。自分では気付かなかったかもしれないし、ボクはそんなこと絶対に彼女に言わなかった。けれど、近くにいれば分かるのだ。…分かってしまうのだ。

笑顔は減った。確実に減った。彼女の日課となった寝オチも溜息も、学生の頃はほとんど見たことが無かった。顔には赤いブツブツが出来てしまい、23歳の彼女はそれをひどく気にしていた。

 

 

ボクはいつしか、こう思うようになった。

 

 

 

「こんな働き方、絶対に変えるべきだ。」

 

 

 

仕事にやり甲斐を感じている人に、職自体を変えろなんてもう二度と言うまい。あれは軽率な発言だった。

でもきっと、他にやり方はあるはずだ。少なくともただいまの後にすぐ溜息をつくような、そんな生活は変えさせたい。1日6時間くらいは寝てほしい。休日にはニコニコ笑ってデートをし、英気を養って月曜からまた頑張ろうと思えるような、そんな働き方だってあるはずなんだ。

 

彼女は毎日、必死に「生活」に食らいついていた。人一倍真面目で、努力家だったのだ。キャパシティはもう、とっくに限界に見えた。だからこの状況は、彼女の能力不足が原因ではないのだと悟った。

 

 

教員の働き方。それを根本から変えねばならないのだ。

彼女以外の教員の場合は…?

お正月に地元に帰り、友人(中学校教員)にこの話をしたら「それは大変だったね。」と言われた。違う。大変だったのはボクではない。彼女だ。…元彼女だ。

でもさ、と友人は続ける。「だんだん麻痺してくるんだよね。」

 

「朝7時に家を出て、夜22時に帰ってくるのさ。家帰ったら飯食って寝るだけ。最初は辛くて仕方なかったけど、こんなもんかと思ううちに当たり前になっちゃった。休日出勤も多いし、残業代も出ない。おかげで女の子と遊ぶ暇もないよ。」

 

そして彼はこう言う。

 

「でも俺、子供に教えるのは好きなんだ。」

「だからきっと、なんだかんだで続けていくと思う。」

 

友人は力なく笑った。おまえの元カノの気持ち、ちょっと分かるなぁと、申し訳なさそうに笑った。「教員と付き合うのは大変だったろ?」

 

…こんな姿、見たくなかった。

麻痺だって?働くのに麻痺が必要か?

彼らの健康で文化的な生活が保証されていない、この国の教員の働き方は…狂っている。

 

 

 

ボクのような部外者が騒ぐことで、現場に影響を及ぼすことはまず、ないだろう。余計なお世話と煙たがられることも、お前が見ているのは氷山の一角だ、理想論を振りかざすなと一笑に付されることも重々承知の上で、それでもボクは強い意志でこのブログを書いている。

 

今のままじゃダメだ。ダメなんだ。たとえ現場の教員達がこれでいいと思っていても……ええいもう言ってしまえ。「ボクは」そんなの嫌だ!ここまで来たら綺麗事は無しだ。

 

 

 

大切な人から笑顔が減る仕事が、幸せなものだなんて決して思えない。

最後に。

変えたい。現状を、絶対に。ボクの周りの教員はみな、他人を幸せにすることに生き甲斐を感じられる、素晴らしい人達だ。

だけど、あなた達だって、幸せになるべきだ。人を育て、幸せにする職業は、本人も幸せになるべきなのだ。仕事も、もちろんプライベートも。

 

 

教員の皆さん、今のままで、本当に幸せですか?

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